白樺派のカレー
ニュースレター第7号
2016年6月発行
白樺派のカレー普及会のメンバーの安河内志乃さんが英国滞在中にセント・アイヴスでパスティに出会いました。この出会いから白樺派のカレーパスティが生まれたのです。
しっぽだらけのイギリス通信
安河内志乃さんはご自身の英国滞在中に経験された出来事をエッセイ集「しっぽだらけのイギリス通信」にまとめられています。
この本にセント・アイヴスでのパスティと出会いが綴られています。135ページから引用しましょう。「”Cornish Pasty” (皮がパリパリ、ころころ牛肉とじゃがいもと玉ねぎ入り)、どれも一コ60pから70p(百円ちょっとくらいです)でも、両手に余る大きさで、焼きたてのあつあつ。歩きつつお行儀が悪いな、とは思ったのですが、地元の人もそうやっているので、はぐはぐっとほおばりました。これは、どう表現すればいいか・・・とにかくどこで食べたのより皮も、中身も上等でした。」
セント・アイヴスは、ランズエンド(地の果て)と呼ばれるイギリス最南西部にある小さな町です。たまたま、人々が列を作っていたお店で購入したのが、コーニッシュ・パスティ(Cornish Pasty)でした。
あまりに美味しかったため、セント・アイヴスで食べたパスティは忘れられない思い出となりました。
パスティは盛り上がった半円形をしたパイのようなスナックで、中の餡は牛肉・玉ねぎ、じゃがいも・蕪などです。歴史はとても古く、18世紀のレシピが残っているほどです。今でもコーンウォール地方ではパスティは人気スナックで、人々は歩きながら、おしゃべりしながら熱々のパスティを手軽に楽しんでいます。
バーナード・リーチと「東と西のマリッジ」
「白樺派のカレー」は、お料理上手だった柳兼子さんのカレーに「これに味噌を入れたらうまいだろう」と、我孫子の柳家に逗留していたバーナード・リーチが提案したことから誕生しました。
バーナード・リーチが暮らしたセント・アイヴスでのパスティとの出会いは、我孫子とセント・アイヴス、そして、白樺派のカレーとバーナード・リーチという偶然の結びつきを改めて意識させることになりました。リーチは「東と西のマリッジ」を提唱しましたが、白樺派のカレーパスティはリーチの言う「東と西のマリッジ」を現した食べ物ではないでしょうか。
柳家の庭に築いた陶芸の窯が焼失した後、リーチは濱田庄司と共に英国に帰り、セント・アイヴスに窯を築きました。おそらくバーナード・リーチも濱田庄司も陶芸の作業の合間にパスティで小腹を満たしていたことでしょう。
なお、セント・アイヴスのテート美術館分館には、バーナード・リーチの作品が展示されています。
白樺派のカレーパスティ商品化
リーチがセント・アイヴスに窯を築いたのが1920年のことでした。そのちょうど90年後の2010年に、取手市のパン屋さん「クーロンヌ」にて「白樺派のカレーパスティ」が販売されました。同年秋に開催された「あびこスカイフェスタ」では、カレーパスティが飛ぶように売れ、慌てて増産する事態になりました。
美味しい「白樺派のカレー」が手で持って楽しめる、というのがパスティの利点です。さらには2013年にはパスコが「白樺派の焼きカレーパン」とともに商品化し、イトーヨーカドー(千葉県東葛エリアと東京都東部エリア)で半年間販売されました。
イトーヨーカドーで販売された
カレーパスティとカレー パン(2013年)
再度の商品化を願っています!
現在は残念ながらパスティの販売は行っていません。時々、パスティはどこで買えるのですかとのご質問をいただくことがあります。手軽に白樺派のカレーを楽しめるだけでなく、バーナード・リーチとセント・アイヴスにちなんだ白樺派のカレーパスティを再度商品化したいと思っています。セント・アイヴスのお店のように熱々のパスティを提供することが必要なのかもしれません。これまでの白樺派のカレーパスティの販売経験をもとにより息の長い商品としてカレーパスティを育てたいと思っています。
「我こそは商品化したい!」と手を挙げてくださるお店や企業をこころよりお待ちしています。